アフタヌーンにサイレンは響く

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 こんなことってあるんだなあ。それが正直な感想だ。
 いつもお弁当を持って学校に行くのに、せっかく高校に入ったんだから学食を食べようと思って、あの日だけはそうしなかった。
 あの日、食堂のメインメニューは日替わりランチが二種類と、カルボナーラ、うどん、ラーメン、そしてチキンカレーだった。麺類はわざわざ家の外で食べるようなものじゃないと思ったからすぐに候補から外して、日替わりランチとカレーの三種類で迷った。そしてカレーを選んだ。どきどきしながら食券を買って、チキンカレーお願いします、とえんじ色のエプロンをしたおばさんに言ったとき、今のわたし、高校生って感じがするなあなんて思った。おばさんはてきぱきとした動きでカレーを用意してくれて、わたしはそれを受け取り窓際の席に座った。ガラスの向こうで猫があくびをしていた。
 カレーは、びっくりするほど苦かった。
 わたしたち家族はずっとアメリカに住んでいて、わたしが高校生に、弟が中学生になるのを機に日本に帰ってきた。だから、わたしも弟も日本食は母の味しか知らない。厳密にいうとカレーはインド料理のような気もするけれど、インドのカレーとわたしが思うカレーは全くの別物だから、わたしにとってカレーは日本食だ。
 マイペースでぼんやりしているところがあるわたしは、この料理って本当はこういう味なのかなあ? と思いながら、その苦いカレーを食べ続けた。それがよくなかった。
 午後の授業から胃がむかむかしてきて、教卓のすぐ前に座っているにも関わらず席を立ち、トイレで一回吐いた。これはまずいと早退した。帰宅途中、学校の最寄り駅のトイレで何回も嘔吐をくり返して、脱水症状に陥ったあと意識不明になった。そして、救急車で金井総合病院に搬送されたのだった。
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