It was my pleasure to have known Rusty, it really was

Written by Chisato. No reproduction or republication without written permission.

「ラスティ」
 深夜の食堂で名前を読んでみたけれど、あの明るい返事は聞こえない。ここ一週間くらいずっと胸騒ぎがしていた。だから、本当は昨日のアスランからの通信は繋げたくなかったのだ。でも、彼から告げられることを知らなくちゃいけないという気がしてモニターと向き合った。そこからが最悪だった。
 ラスティはいつだってほしいものをくれるヒーローだった。彼のおかげで、男の子ばかりのメカニック組の中で浮いていたわたしが、地に足をつけて踏ん張れるようになった。このショートヘアーも好きになれたし、この化粧っけがない顔も許せるようになったし、射撃だってクラスで一番を取れるくらいにまで上達した。それに、ラスティなしではアスランやニコル、イザーク、ディアッカとは仲良くなれなかっただろう。会話すらしない関係で終わったかもしれない。
 彼らと初めて話したのは、アカデミーの、ある昼休みだった。食堂を目指していると、ッ! と大きな声でラスティに呼ばれた。鮮やかなオレンジ色の頭はこっちこっちとぴょこぴょこしていて、なんだろう? と近づいたらいきなり腕を組まれた。そしてラスティは、こいつが俺のマブダチ! と言って四人ににかっと笑った。彼らの反応はまちまちで、アスランは落ち着いていた。アスランはラスティと同室だったから、彼特有の順序をすっとばして、いきなりぽーんと飛び込んでくるような言動に慣れていたのだろう。ニコルは目をこれでもかというくらい丸くしていた。イザークは眉間にしわを寄せていて、ディアッカはおもしろそうな顔で口笛を吹いていたっけ。あの日からわたしたちは六人でよく一緒にいるようになった。ラスティとわたしの二人だけでも十分幸せだったし、みんなでわいわいするのも楽しかったなあ。
 昨日はアスランからの通信のあと、イザークともモニターが繋がった。イザークはラスティに、俺は死ぬつもりなんてないけど、そうなったらお前ら四人のうち誰でもいいからに連絡してくれよ、と頼まれていたのだと教えてくれた。
 ラスティは最後までラスティだった。ばかでうるさくて迷惑で、それでいてしっかり気遣いのできる、わたしの、たった一人のマブダチだった。彼が死んだなんて聞きたくなかった。ねえ、わたし、この前の休みに色違いのマグカップをワンペア買ったの。一つはあなたにあげようと思っていたんだよ。ああ、おねがい。ラスティ、声をきかせて。

inserted by FC2 system