I'm so sad to hear about Nicol's passing

Written by Chisato. No reproduction or republication without written permission.

 頭がまっしろになった。
 アスランはこんな嘘をつくような人ではない。ラスティとかディアッカとかみたいにくだらない冗談を言う人ではないということも、わたしは知っている。だからきっと今の言葉は事実なんだろう。
 モニターの中からすまない、本当にすまない、と声が聞こえる。彼はこんな人だっただろうか。こんなふうに弱々しく謝る人ではなかったはずだ。この人はだあれ? わたし、あなたなんか知らない。…………ううん、ちがう、ほんとうは知っている。ラスティが死んでしまったとき、今日ほどではないにしても、わたしよりもアスランは大丈夫なのだろうかと心配してしまうくらい辛そうにすまないってくり返していた。あの日、ラスティのことを聞いてそれはもうショックを受けたものだけれど、アスランの様子を把握していたってことは、わたし、意外と冷静だったのかもしれない。今もこうして別のことを考えているくらいだし、わたしって、こころがつめたいのかなあ。
「アスラン、もう頭を下げないで。アスランも辛いだろうし、戦闘があったなら体を休めないと」
……ああ、すまない。それで、その、帰艦してからニコルのロッカーを開けたんだが」

 それじゃあね、と言ってアスランとの通信を切った。モニターが黒く塗りつぶされた瞬間膝から崩れ落ちて、しばらく床に体を預けたままぼーっとしていたら、机の上のオルゴールが目に留まった。あれはニコルがわたしにくれたものだ。きれいなターコイズブルーの包みを開けると、この世の女の子の幸せという幸せがすべて詰まっているんじゃないかと思うほどかわいいプレゼントが入っていて、びっくりしたのを覚えている。それに、ぱきっとしたカナリアイエローでもなく、マスタードのような濃い色でもない、ちょっと白っぽいやさしい黄色というものすごくわたしの好みの色だったから本当に喜んだ。ディアッカがにやにやしながら教えてくれたのだけれど、ニコルはいろんな人にわたしの好きな色を聞いて回っていたらしい。
 そのことも嬉しくてお礼がしたいと告げたわたしに、ニコルはそうですね、とちょっと考えてから、においしいものを作ってほしいです、とはにかみながら言った。わたしは彼の淡い色のふわふわした髪からロールキャベツを連想したのでそれを提案したら、アスランの好物ですね、と言われてしまって、あの言葉に他意はなかったのだろうけれど、ニコルの好きな食べ物を知らなかったなんてとしゅんとしたものだ。
 そこまで思い出してはっとする。わたし、まだ料理を作っていない。食べてもらっていないよ。ねえ、ニコル、死んだなんてうそでしょう。

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