I'm shocked to witness the sudden death of Heine

Written by Chisato. No reproduction or republication without written permission.

 うそだ。
 モニターが、爆発して海に落ちていくオレンジ色のグフイグナイテッドを映している。ZGMF-X2000。あれにはハイネが乗っているはずだ。うまく呼吸ができない。
 今朝から嫌な予感はしていた。ラスティのときと似たような感覚だった。だから、今日は落ち着いていられなかった。ハイネはそんなわたしに、なんだよ、今更俺の出撃に緊張してんのかあ? と声をかけてきた。わたしたちメカニックがパイロットを送り出す際、メカニックが不安そうにしていたらパイロットも不安になってしまったり、メカニックが怖がっていたらパイロットも怖くなってしまったりすることがある。わたしはそれを知っていたので、ううん! 全然! と無理やり笑って彼をコックピットへ押し込んだ。でも、わたしたちはだてに先の大戦で同じナスカ級に乗っていたわけじゃない。ミネルバは俺が守るからお前は安心して乗ってたらいーの、と言ってハイネはわたしの頭を撫でた。そのときの彼はかつてホーキンス隊にいた頃と変わらない、ちょっと気取っているのに人好きのする顔をしていた。だから思わず、わたしも昔と同じように声を張り上げてしまった。一つ、機体を整備するのがわたしの仕事です! 装甲も内部機器もめちゃくちゃにやられて構わないから、絶対もって帰ってくること! 二つ、機体は使われてなんぼです! 絶対生きて帰ってくること! 格納庫中の視線を集めてしまって恥ずかしかったけれど、ええい、ままよとハイネに拳を突き出した。彼もそうして、こつんと音がした。
 ハイネはずっと頼れる先輩で、同僚で、仲間だった。人の感情の機微に鋭くていつも最良の接し方をしていたし、面倒見もよかった。カリスマ性のようなものも持ち合わせていたのかもしれない。だから、彼にあやかって機体のパーソナルカラーをオレンジ色にするパイロットがいたのにも頷けたし、数日前に異動してきたのを感じさせないくらいミネルバに馴染んでいても、さすがとしか思わなかった。
 コンディションレッドが解除されて我に返る。わたしが、今、しなければいけないことは何? アスランのセイバーと、シンのインパルスと、ルナマリアのガナーザクウォーリアと、レイのブレイズザクファントムの、四機、のチェックでしょう。格納庫へ行かないと。ああ、ヴィーノとヨウランがこちらを心配そうに見ている。いま、そんなにひどい顔なのかなあ。
 この前、デッキでハイネはアスランに、戦争なんだから割り切れって話をしていた。ねえ、これもそうしなくちゃいけないの? 違うよね、ハイネはわたしに、仲間の死に耐性なんかつけてどうすんだって怒ってくれたことがあった。だから、あとで泣くのを許してくれるよね、ハイネ。

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