I'm sorry

Written by Chisato. No reproduction or republication without written permission.

「そんな顔でここにいられても邪魔だ! 戦力にならないやつはひっこんでろ!」
 がマッドに怒鳴られている。
「すみません」
「今のお前は使いものにならん! 出ていけ!」
「でも」
「出ていけ!」
 はい、と暗い声で返事をしては格納庫から出ていった。アスランも、彼女を追いかけて姿を消す。俺もそのあとに続いた。
 は食堂に着くなり、両手で顔を覆った。すぐに嗚咽が聞こえてくる。アスランはしばらくその様子を伺っていたが、彼女の隣に足を進めた。

「あす、らん。……すまない、は、なしだからね」
 の言葉に、アスランは、はっとした顔をして俯いた。
「あのときと同じだな。俺は、何をやっているんだろう」
 が首を横に振る。
 俺は、あのときがいつを指すのか、なんのことなのか分からない。とアスランについて知っているのは、二人はアカデミーの同期で、親しいということと、アスランが、きゃらきゃら笑うとハイネを羨ましそうな顔で見ていたことくらいだ。
 ほんの数日前、ハイネはミネルバに異動してきた。この食堂で、まあ今日からこのメンバーが仲間ってことだ、息合わせてばっちりいこうぜえ、と笑った。そこにがやってきて、旧知の仲らしい二人は再会を喜んだ。それから、しっかし、ヤキン・ドゥーエから二年経ったっていうのに、お前、変わらないなあ、と言って彼は彼女を軸に回った。そして、髪も伸びてねーし、化粧もしてねーし、女っけは家出中かあ? と続け、せっかくこれ持ってきたのにさあ、と月白色のリボンがかけられた、ウルトラマリンブルーの小さな箱をポケットから取り出して、むっとした顔の彼女に差し出した。彼女は、なに、その発言の免罪符ってこと? と言いながら受け取った。それが作業着のポケットに姿を消したとき、彼女の眉間のしわも消えていたことは記憶に新しい。
 ハイネとは、まるでカルガモの親子のようだった。彼女は、ハイネ、ハイネ、と嬉しそうに彼のあとをついて回った。それを見てシンが辛そうな顔をしていたのを覚えている。もしかしたら、死んでしまった妹のことを思い出していたのかもしれない。
 今泣いているを見て、ラウを失ったときのことが頭をよぎる。
 ハイネもラウも、死ぬには早すぎたのではないだろうか。

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