再会行レター・チケット
This Fanfiction Was Written by Chisato. Please Don't Reproduce or Republish without Written Permission.
越前さんへ
こんにちは。
誰かに手紙を書くのは久しぶりなので少し緊張しています。
この間はすみませんでした。
越前さんから退院すると聞いたとき、僕は心から喜べませんでした。
越前さんの言っていた通り、自分よりも具合の悪そうな越前さんを見て安心していたところはあります。すみません。
でも、自分はそんなにひどい状態じゃないと比べられる人がいなくなるから、退院を喜べなかったわけではありません。
僕はギラン・バレー症候群に似た免疫系の病気で入院しています。これは難病だそうです。
まさか自分がそんな病気になるとは思わなかったし、どういう病気なのかもまだ完全に理解できていません。
入院してからずっと部活仲間がお見舞いに来てくれるんですが、最近は嬉しさよりも焦りや悔しさのような、不安定さを感じるようになっていました。
僕は部長をしていて、弱っているところをみんなに見せるわけにはいかないと気を張っていたし、作り笑いもしていました。
正直なところ、これは辛くてストレスさえ感じていました。
そんな中、越前さんと友だちになって少し楽になりました。
越前さんは話しやすくて、一緒にいても部員の前みたいに取り繕わなくてよくて、僕は何も考えずに笑っていられます。
こんなことを書くと失礼かもしれないけど、最初それは越前さんが僕の病気や学校での僕を知らなくて、どちらかが退院してしまえば二度と会うことはない、いってしまえば他人だからなのかと思っていました。
でも何回か話してみて、そうじゃないと気づきました。
前にも言った通り、越前さんって不思議なんです。
具体的に何がそうとは言えませんが、考え方とか言葉とか、他にもいろいろ僕や他の人がなかなか思い付かないようなものを越前さんは持っています。
年上だからかもしれないとも考えたけど、それだけじゃない気がします。
越前さんに退院すると言われて、じゃあもう僕たちは会わなくなるのかと考えたら素直に喜べませんでした。
越前さんを怒らせてしまったと分かったときはまず驚いて、それから不謹慎にも安心してしまいました。
越前さんはたまにすごく眩しくて、なんだか僕とは違う生き物みたいに思えることがあります。
そんなはずはないのにおかしいですよね。
だから越前さんも怒るんだなって少しほっとしました。
ただ、退院をちっとも喜べなかったかというと違います。
越前さんが少しずつ、確実に回復していく様子は希望でした。
僕は思うように治療が進んでいなくて、いつ退院できるのか、そもそも病気は治るのか、治ったとしても今まで通り生活できるのか先が見えません。
でも、ちゃんとよくなっていく越前さんを見ていると、僕も大丈夫なのかもしれないという気がしてきました。
越前さんは僕がいやになってしまったかもしれません。
でも僕は越前さんに助けてもらったし、なによりも話していると楽しいからまた会えるといいなと思っています。
越前さんが辛いときには力になりたいです。……なんて、お節介でしょうか。
もしよかったらこれからも友だちでいてください。
退院おめでとうございます。
幸村精市
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